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2012年5月27日日曜日

迚も。

古い日本の小説を読んでいると、しょっちゅう難しい漢字に出会う。
とくに、今でも日常で使われている言葉に漢字が使われているのをみると、俄然興味が湧く。


今回のタイトルは「とても」と読む。「とてもおいしい」「とてもじゃないけどムリ」の「とても」。
「とてもだめだ、できない」というように、本来はこの言葉の下に打消しや否定的表現をつけて、否定の意味を強調するように使われていたそう。
それが否定の意味合いが薄まり、純粋に強調だけのイミとなった流れは「全然」と似ている。

なお、「どうせ~なら」とか「所詮は~」というような、ヤケクソなニュアンスもあるそう。これは現代ではあんまり使わないけれど、江戸の人びとの勢いあるしゃべりに似合いそうな気がする。


んで、この「迚」が何なのか? という疑問。
これ、「(しんにょう)+中」で、道半ばを表すもの。「しんにょう」は道や歩くことを意味する。「中」はそのまんま。
へんとつくりの意味を合わせて作られた日本製の文字(国字)で、漢字のふるさと中国にはなかったそうな。


引かれている例をみると、


「迚も、地獄は一定すみかぞかし」(歎異抄)


のように、少なくとも鎌倉時代以前にはあった文字。
こういう創作文字はほかにも少なくとも1000近くはある。一体どんな人が、どんな状況で作っていったのだろう。こういうのを知るたびに、整然としてあるかのように思っていた「日本語」というものが、さまざまな紆余曲折によって蓄積されていった歴史に触れられる気がして楽しい。

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